「ペルチェ素子」という素材をご存じでしょうか。聞きなれない言葉だと感じる方が多いと思います。ペルチェ素子とは、ある特性をもった素材で、CPUクーラーなどに利用されることがあります。
PC冷却対策の一環として、今回は不思議な特性をもったペルチェ素子を紹介します。
電流を流すと熱移動が発生する「ペルティエ効果」
ペルチェ素子(ペルティエ素子)とは、ワインセラーや医療用冷却装置、自動販売機などに利用されている素材です。通常は2種類の金属によって構成されており、この金属の接合部に電流を流すことで、熱移動が発生するという特性をもっています。(ペルティエ効果)
つまり、片面は「吸熱(冷える)」もう片方は「発熱」するのです。電気を流すと熱を吸い取ってくれる素材、とでも覚えておけば良いでしょう。不思議な素材だと思いませんか?
この熱移動を利用して、CPUの冷却を行うことができるのです。
「冷ます」のではなく「冷やす」ペルチェクーラー
電気を流すと冷えるという特性を活かし、CPUクーラーに利用されているペルチェ素子。空冷CPUクーラーの大半は、CPUの熱をヒートシンクに伝え、その熱をファンの風で冷却しています。
これは、炊き立てのご飯を団扇であおいで冷やしているのと同様のイメージ。要するに「冷まして」いるのです。
しかしペルチェ素子を使ったCPUクーラーは、熱移動の原理によってCPUとの接着面を直接冷やしています。言い換えれば氷を押しあてて「冷やして」いるようなもの。
通常の「CPUの熱を伝えてそれを冷ます」仕組みに対し、ペルチェ素子クーラーは「CPUに冷気を伝えて、ペルティエ効果で発生した片面の熱を冷ます」という動きをしています。
どちらも結果的には同じなのですが、このニュアンスの違いをわかっていただけたでしょうか。
圧倒的な冷却性能
この「冷ます」のではなく「冷やす」特性をもつペルチェ素子製クーラー、かなりの冷却能力を持っています。単体で動作させると冷却面に「霜」がおり、やがては冷凍庫内のように真っ白に凍るほどに冷えるのです。
ただし、デメリットもあります。それは、ペルチェ素子自体に電源が必要で、電力をかなり消費するという点。また、結露が発生してしまうこともデメリットといえるでしょう。
このあたりが足かせとなり、正直なところそれほど流行らなかったのがペルチェクーラーなのですが、一部の冷却にこだわるマニアからは支持されていました。
それもそのはずで、空冷CPUクーラーのトップレベルよりもさらに5℃から7℃もCPU温度を下げられるのです。
ハードなOCを目指すなら、一度は注目してみるべき不思議な素材「ペルチェ素子」。コストやリスク管理も大切ですが、ペルチェのような夢のあるパーツもまた、自作PCの醍醐味ですよね。